アルムナイとは、卒業生、同窓生、OBの意味を持つ”alumnus”の複数形”alumni”からきてます。
会社を退職した後も会社との接点となるアルムナイネットワークを形成する企業が増えてきました。転職が当たり前になってきて久しいですが、こうして会社とOBOGが接点を持っておくことで、再び会社に戻る(出戻り)がしやすくなるのです。
コンサル業界のように、より業界内で転職するのが一般的であった業界では早くからアルムナイネットワークが存在していましたが、日本の大企業でも増え始めています。
新卒パナソニックで、マイクロソフト日本法人代表を勤めていた樋口さんがパナソニックへ出戻りしたのがとても印象的でした。↓参考
アルムナイ制度のメリットとは
若手の離職が相次ぐ状態というのは、少しマクロで見てみると、「同じ会社のバックグラウンドを持った人材が日本中(下手したら世界中)に広がっている」ということだと思いました。これは見方を変えると良いことではないでしょうか。
変化のスピードが早く、既存事業の延長線上に未来を描きにくくなってきている現代のビジネス環境の中で、前の会社がどんな会社がわかった上で別の会社にいる人というのは、前の会社との協業のアイデアを思いつきやすいと思いますし、また戻ってきて活躍する(出戻り)というのも十分考えられると思ったからです。
特に、今会社に無いスキルが必要なときに、会社に所属しながら身につけようとするよりも、外に出て身につけて、また戻ってきた方が会社にとっても個人にとっても良い場合があります。
もちろん戻ってくる保証はないのですが、会社と個人の関係性としてゆるく繋がっておくのはとてもメリットではないでしょうか。
アルムナイ制度の作り方
以前勤めていた大企業でも、若手の離職が増えていたため、在籍中に人事を説得して小さく立ち上げました。当時は自分が辞めることは考えてませんでしたが、辞めた今となっては自分もアルムナイの一員になっております。
アルムナイ制度を立ち上げるときは、スピードを重視して有志での実施を考えましたが、「有志の思いつきではいつか存続しなくなる」と思い直し、人事を巻き込みました。このときの人事部長がとても共感してくれて、社内の反対を押し切って通してくれたため実現できました。
社内では、「引き抜きにあうのではないか?現職社員の離職を加速するのではないか?」という意見も出ました。その懸念はわかるのですが、これはすなわち、自社の魅力の無さをアピールしているようなもので、社員から選ばれるような魅力作りに同時に励まないといけないです。当時の人事部長はそこまで考えていらっしゃったのだと思います。
さて、具体的にアルムナイネットワークの立ち上げって何かというと、実際やったことは、難しくなく、公式のフェイスブックページを作ったということです。媒体を何にするかは迷いましたが、簡単にできることを優先した形となりました。
そして、退職していく人たちにアルムナイネットワークの案内のビラを渡したり、退職した人たちに人づてで連絡して入ってもらったりということをしてました。100人近くが入ってくれたと思います。
放置ではいけない、アルムナイ制度の運営
アルムナイの勧誘自体は退職時に行うことで可能ですが、実際にここで何をすればよいのでしょうか。
簡単に行えるのは情報発信です。プレスリリース等を発信することで会社について知る機会、頭の片隅からなくならなくする効果があると思います。
そして大切なのは、アルムナイと会社のリアルな接点である飲み会ですが、企画・募集・開催とそれなりの手間がかかります。1年半ほどで私が幹事となって計4回ほど飲み会を開催しました。毎回5−20人ほどの参加者がおり、様々な業界で活躍するOBOGとお話できる機会は非常に貴重なものでした。
退職者同士とはいえ、大企業では顔どころか名前も知らない人々の集まりになってしまいます。フェイスブックページの難しさは、その中で飲み会の参加表明をするハードルの高さです。地道に個別にお誘いをして集めなければ集客は容易ではありません。
このように、飲み会一つ開催するにも中々運営が大変なのが数年運営していてわかってきました。人事と一緒に開催したものの、マニュアルもゴールも不明確な中、ボランティアで動いてもらうことを期待するのは中々難しいのが実情です。
アルムナイ制度の活用には、人事戦略への組み込みが不可欠
従って、アルムナイ制度を効果的に活用していくために大切なことは、
「アルムナイネットワークは会社の人事戦略の一つとして位置づけるべき」
大企業ではまだまだ辞めていく人は裏切り者、一度辞めたら関係性はおしまい、という風土は少なくないと思います。この考え方をアップデートし、一度入社した人は退職後も含めて、社会人人生を通して関わっていく、アルムナイの人材も一つの人材プールとみなし、新たな仕事へのアサイメントの際には積極的に活用していくということです。
そのためには、当然どんな人が辞めていって、彼らが今どこで何をしているのか、どんなスキルを身に着けていて、どんな成果を上げているのか、人事はよく知っておく必要があります。そのため人事は定期的にアルムナイを歓迎するイベントを開催して、タダで飲み食いしてもらい、細く緩くつながることを積極的にやったほうがいいと思います。
これまで退職者の方々とお会いしてきましたが、辞めた後もアルムナイの活動に関与してくれる人材は、次の職場でご活躍されている方々(そうでないと顔を出しにくいのでしょう)が多く、かつ辞めた後も会社のことを好きでいるような方々でした。やりたいと思える仕事と、力量に見合った待遇を出せれば十分戻ってきてくれるということを感じます。
社会人人生全体を通して、雇われている間のみならず、長いスパンで会社との付き合いができると素敵だなと思います。
大企業からスタートアップへ転職した著者が見たリアルについて様々な記事を書いており、以下はそのまとめページですのでぜひ御覧ください(転職について、組織論、マーケティング、ITなど)。
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