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エネルギーの種類と使い方、脱炭素化によるシフトの仕方は

人類は化石燃料を手にし、膨大なエネルギーをもって経済発展を成し遂げてきました。今現在も大部分のエネルギーは化石燃料で賄っています。この膨大なエネルギーはどんな用途で使用されているのでしょうか。そして地球温暖化の原因として二酸化炭素が名指しされる中、その排出量を稼ぐ化石燃料は名指しで非難されています。今後どのような形で脱化石燃料が進んでいくのでしょうか。

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エネルギーはどんな種類があり、どのように作られ、どのように使われているか

エネルギーの主な使われ方は、「冷暖房(特に暖房)」、「電気」、「運輸」です。そのほとんどは化石燃料によって賄われています。

化石燃料は数億年という単位をかけて形成されてきたものですが、産業革命以降大量に消費しているため、今後数十年で使いつくしてしまう可能性があります。
一方で「石油はあと40年」と何十年も前からずっと言われてきていますが、ずっと40年なのはなぜでしょうか。新たな採掘方法の発見がなされることで可採年数が伸びていると言われることもありますが、無尽蔵にあるとなると価格が下がってしまうので、価格コントロールのために「ずっと40年」といい続けていると見るいう見方もあります。

以前は化石燃料が枯渇するという意味での「エネルギー問題」が焦点でしたが、昨今はCO2を排出するため、地球温暖化を促進させることが最大の問題となっています。私たちは化石燃料への依存からどのように脱却できるのでしょうか。

まずはエネルギーの種類と生産、消費の全体像から見ていきます。

エネルギーは何から作られ、どう消費されているのか

以下は、国内における一次エネルギーから最終エネルギーまでのフローを表した図です。


【第211-1-3】我が国のエネルギーバランス・フロー概要(2016年度)
資源エネルギー庁「平成29年度エネルギーに関する年次報告」 (エネルギー白書2018)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018pdf/

一次エネルギーの種類は、化石エネルギー比率は9割

上述のエネルギーバランス・フローの左端、一次エネルギーの割合を円グラフにしたのが下図です。こう見るとエネルギーの種類としては、化石エネルギー(ガス、石油、石炭)でおよそ9割であることがわかります。

一次エネルギーの種類

次に最終エネルギー消費の方ですが、消費地でいうと「企業・事業所」が圧倒的ですね。

最終エネルギー消費

これだけだと、何に使っているかわからないので、用途別エネルギー消費のデータを持ってきます。

家庭で消費されるエネルギーの半分は熱

下図は家庭で消費されるエネルギーの消費源の割合です。こう見ると、「暖房」と「急騰」で半分を占めています。つまり、「温める」ことに使うエネルギーが膨大だと言えます。確かに、ドライヤーに電子レンジに高温にする機器のワット数は他の家電機器と比べてもかなり大きいですよね(1000Wとか)。

【第212-2-6】世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の変化
エネルギー白書2018: https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018pdf/

運輸部門はほぼ自動車とトラック

一方運輸部門は、ほとんどが「自動車」であることがわかります。グラフは割愛しますが、「運輸旅客」に関しては8割が自家用車、「運輸貨物」に関しては、9割が自家用・営業用トラックだからです。つまり、モビリティを電動化していくことでかなり化石エネルギーの使用量を減らせる可能性があります。単に電化していくだけでは、電気を化石エネルギーから作っている限り良くなりませんが、再エネ由来の電気でモビリティが走るようになると劇的に化石燃料使用量を減らせると言えます。

ここでは詳しく触れませんが、走行時のCO2排出量(Tank to Wheel)だけではなく、燃料採掘から自動車生産時まで含めたCO2(Well to Wheel)で見ると電気自動車よりもハイブリッド車の方がCO2排出量は少ないというデータもあります。そういう意味では、CO2排出量を議論する際は製品を使っている時だけでなく、製品の製造段階から考える必要があります。

自動車の化石エネルギー比率は高いですが、単に電動化するだけでは電気を何から作っているか次第で逆効果にもなりうることを留意しておく必要があります。

企業・事業所における消費エネルギーは多様

最終エネルギー消費の6割を占めたのがこの「企業・事業所」でした。この部分の実に7割が「製造業」になります。製造業は物を作る過程で大量のエネルギーを消費すること、日本は製造業が活発なことがよくわかります。

製造業だと括りが大きいので、内訳を細かく分けて示したのが以下のグラフになります。

ちなみにこの「総合エネルギー統計」ですが、初めて見たのですが、部門ごとのエネルギー消費が細かく記載されていてものすごいデータです。お宝です。

さて、これを見ますと、「化学工業」1/4、「鉄鋼・金属」1/4、「第三次産業」1/4、「その他」1/4といったところでしょうか。この全体の量を減らすことも、化石エネルギー比率を下げることも中々イメージが湧きません。

鉄鋼など、炉でガンガン高温にするには化石エネルギーが必要ですし、化学工業もそもそも原料が石油由来だったりします。この辺はもう少し違う切り口で考える必要がありそうです。

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脱炭素化に向けたエネルギーシフト

カーボンニュートラルに向けた化石エネルギーへの逆風

以下で書いたように、日本も2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標を打ち立てました。
これはすなわち、正味発生するCO2の量をゼロにする(発生した分は吸収・貯蔵する)ということになるので、極めて野心的な目標です。

一次エネルギーに占める化石燃料比率が現在9割なわけで、ほぼすべてのエネルギー源が入れ替わるような印象になります。

しかし化石燃料を全く使わないというのは、野心的というよりは極めて厳しいです。

CO2の産出源となっている化石エネルギーの脱炭素化とは一体どういうことなのか、これにはいくつかの方向性があります。

  • CCUS:CO2の直接利用、地下封入
  • 水素を燃やす:発電・熱にする
  • アンモニア:水素と窒素から作る、発電・熱に利用
  • バイオマス:CO2を吸収してできた植物を燃料として使用
  • メタネーション;水素とCO2を合成して燃料となるメタンを製造

方法としては、発生したCO2自体を補足する、燃料自体をCO2が発生しないものに切り替える、という大きく2つに分けられます。

CO2を捕まえるアプローチ

CCUS

CO2を回収し、地中深くに貯留・圧入するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と二次利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)という2つを含む技術です。

エネ庁 基本政策分科会 #35:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/035/035_004.pdf



ここで重要なのは「CO2を高純度で集める」という部分です。CO2を集めてしまえば二次利用にせよ埋めるにせよ難しくはなく、他の気体と混じっている状態から、CO2だけを取り出すのが困難ということです。

CO2を抽出する方法としては、アミン性溶液を使うのが一般的で、火力発電と組み合わせることで、化石燃料を燃やしたときに出るCO2を大気に出さずに済みます。しかし約20%程度は効率が落ちてしまいます。

CCSの設置した火力発電のターゲットコストは将来13-15円ほどとエネ庁の資料には書かれています。将来においてもこの価格水準というのは中々厳しいもので、不安定電源を調整力と組み合わせて用いたほうが安くなるのではと感じます。

それならばと、CO2をなにかに使おう(二次利用)という発想になります。ハウス栽培やドライアイスなど、CO2を必要とする場は確かにあるのですが、火力発電で発生するCO2を使い切れるほどの需要を作るのが難しいというのが課題です。

有望な利用先はEOR(原油増進回収法)で、これは石油を採掘する際にCO2を圧入することで石油の採掘量を増やすことができる技術です。日本ではそもそも石油を採掘していないので難しいです。CCSに適する土地は日本でいうと日本海外側に集中しているようです。こうなると火力発電所が多い太平洋側からの輸送も課題になります。

課題はどう総コストを下げていくかです。それでも変動の大きい太陽光や風力だけでは需要を支えきれないとき、火力の力が必要です。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccus.html

メタネーション

CO2をH2(水素)と合成してメタン(CH4)に改質しよう、というのがメタネーションです。
こうすることで、CO2が新たな燃料に生まれ変わります。

エネルギー情勢懇談会(第6回)資料7
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/006/pdf/006_011_06.pdf

しかしここで注意しなくてはならないのは、メタンを作る上で水素(H2)が必要ということです。水素を水素のまま運ぶ、もしくはそのまま燃やせばいいのではないか、という気がします。実際メタンを作るために10~20%ほどはエネルギーをロスしてしまいます。

それでもメタネーションが注目されているのは、いきなり水素に移行するのはハードルが高く、メタンであれば既存のガス管に流せるために移行段階に使えると考えられているからです。

以下参考

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CO2が発生しない燃料に切り替えるアプローチ

バイオマス

バイオマスについては以下で詳しくまとめています。

端的に言えば、植物を燃やして燃料にするということになります。しかし使用量が増えてくると、調達が難しくなっていきます。実際には多くを輸入に頼っています。輸送コストだけでなく、輸送時にはCO2も排出されるため、脱炭素化という意味では実はあまり効果的ではない実態があります。

バイオマスを考えたとき、本来は林業から考える必要があると思います。なぜなら、バイオマスで利用される木くずは、木材をカスケード利用していった最後に残るものだからです。

バイオマスというのはかなり広い概念なので、様々な有機物(ゴミ)を燃やすことで発電に利用していくという方向にも活路はあると考えられます。

アンモニア

アンモニア(NH3)は燃料として注目されています。アンモニアは化石燃料のように燃やすことで蒸気を作り発電することができます。アンモニアの主な用途は肥料で、ハーバーボッシュ法という製造方法で農業革命に大きく貢献しました。

目下注目されているのは、CO2排出量が多い石炭火力の燃料に一定割合のアンモニアを混ぜることで、石炭の使用割合を減らすことです。このロジックは、アンモニア自体をCO2が排出されない方法で作るという前提があります。

アンモニアを作るハーバーボッシュ法は、水素と大気中の窒素(N2)から作るのですが、再生可能エネルギーを使って作った水素を使えば、CO2を排出しない燃料になるのです。

エネ庁::アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ammonia_01.html

これもメタネーションに近い側面があり、水素社会へ移行する前の段階で、運びやすい脱炭素燃料として注目されています。本格的に発電に使おうとなると、膨大な生産量になるわけですが、アンモニア自体はすでに使われており、バリューチェーンも存在しているため、扱いやすいというメリットがあります。

ただし、アンモニアは毒性があり、異臭もするため、漏れたら大変です。漏れても大丈夫、という燃料はそもそも稀ですが・・・

アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先
次世代エネルギーとして大きな可能性を秘めている「アンモニア」。前編ではあまり知られていないアンモニアの基礎知識をご紹介し...

水素

カーボンニュートラル宣言を経て脱炭素社会の本命が水素社会となってきているように感じます。

水素の製造・輸送・使用と3つのフェーズをつないだ下図がそのバリューチェーンの理解を助けてくれます。

  • 製造方法は、化石資源を改質する方法、再エネの電気を使って電気分解することで作る方法(グリーン水素)があります。前者はそのままではCO2が発生する(グレー水素)ので、CCUSと組み合わせる(ブルー水素)ことで脱炭素化になります。
  • 課題が大きいのが輸送です。水素は運びにくいというのがネックで、液体水素とすることで体積を1/600と大幅に圧縮することもできますが、-249度にする必要があります。MHCはトルエンと結合させることで常温のままで運ぶことができるのですが、脱水素過程でエネルギーをロスします。アンモニアは前述したとおり、水素のキャリアとしてだけでなく、直接燃やせる点でメリットがあります。
  • 使用は燃料電池を通して電気に変換する方法と直接燃やす方法です。まだ技術的に課題もありますが水素を直接燃やしてタービンを回すことで発電もできます。
エネ庁 基本政策分科会 #35:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/035/035_004.pdf

なお水素を燃料として専焼という形でエネルギー転換を図ったらコスト的にどうなのか、という点については下図を見る限り約100円/kWhということでかなりのコスト高ということのようです。

エネ庁 基本政策分科会 #35:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/035/035_004.pdf


日本の水素戦略を見ると、将来的な目標ラインは20円/Nm3という価格水準が書かれています。これは上図でいう11.5円/Nm3の倍ではあるのですが、それでも輸送コストの大幅な圧縮が可能と思われるので発電コストは低減できると思います。

それでもこれを10-20円/kWhにするためには、国内でも水素を長時間貯めることを前提としないバリューチェーンが必要だと思います。水素を製造した場所で水素専焼火力発電を行って電気を作るという方法が現実的でしょうか。それでも発電した瞬間に電気を送る必要がある再エネに対して発電量のコントロールが効くようになるので、再エネが大幅に安くなった世界では活躍の可能性があります。

エネ庁 基本政策分科会 #35:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/035/035_004.pdf

今回は、エネルギーについて、そもそもどんな種類のエネルギー源がどのくらいの割合で構成されているのか、そしてどのような用途で使われているのかというところからはじめました。

化石燃料がその中でも支配的なわけですが、カーボンニュートラルへ向けた脱炭素化という文脈の中では、CO2の排出が問題になるため、これをどう抑制するかという対策が必要になります。

方法論としては今回見てきたように色々あるのですが、どうしてもコストの問題となります。今回見てきた中では、この中でもアンモニアを使用するのは最もコストメリットが大きく現実性があるのではないかと思いました。

脱炭素化観点からはやり玉に挙がる化石燃料および火力発電ですが、再エネだけでは変動が激しい為、需要量を賄うには自由に変動させられることは魅力的です。

今後この分野には幅広く補助金がつき、研究や実証も進んでいくと思うので注目していきたいです。

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コメント

  1. これまた、すごくわかりやすいです。直リンクで使わせてもらいますね。「総合エネルギー統計」も確かに充実です。

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